■序文■


  それは、畏怖。

  それは、尊称。

  それは、忌み詞。

  それは、畏敬。

  それは、――罪過。




  そこにあって破壊を生み、そこになくとも破滅への道標となる。

  恐怖の呪詛も、それにとっては甘美な音色。


  触れなければ融けぬものを、それでも触れたがる情念。

  恐怖から逃れるために縋った先は、抜け出すことの出来ない迷夢。

  狂った暴走はもはや止められず、過ちを過ちで消す悪循環をなす。

  純乎ゆえの忌諱。

  その色は魔を呼び、その味は魔を魅了する。

  あまりにも大きすぎた、理想の代価。



    ―――何度やっても無駄さ。


 紅蓮の深淵に魔の刻印を映し、ソレは冷ややかで不敵な微笑を浮かべた。


    ―――消せやしねえよ。俺は、てめえらの犯した過ちの証だぜ?




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